中野島ロボット

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週刊中ロボ309 日経星新一賞落選作「I氏とT氏」(4/5)

T氏の抵抗
もちろんT氏はこの政策に表だっては反対していなかったが、裏では化石燃料の効率的な利用を推し進めて、エネルギーの自立を遅らせる作戦をとっていたが、両者が裏では激しく対立し改善を推し進めていった結果、いつしか高等教育の無償化と生活用エネルギーの無償化ができあがっていた。
ネットも無料、食料も無料、電気も無料、住居完備、室内栽培でコメや小麦は3期作が当たり前になった。
工場勤務なので、衛生関係も良好で天候に左右されることも殆ど無くなった。何せこの国では農業をする限り電気代が無償になってしまったのだ。
原発も程なくして価格競争力を発揮できなくなり50年を待たずに次々廃止されてしまった。

和解
かくしてこの国には二つの都市が作られることになったのだが、しかしT氏の帝国は火山の突然の噴火により崩れ落ちてしまった。それが無くても遅かれ早かれT氏の帝国には電気自動車の製造に乗り遅れてしまっていて、衰退し始めていたのだが、自然災害が致命傷となってしまった。
これまで対立してきた両者だったが、このI氏はT氏にこの国の農業自立化を託したのだった。

T氏は持てる技術をJ国の農業の再生に投入し、T型生産方式の農業工場を完成させたのだった。
T型農業工場は、地下では畜産や水産、1Fでは農作物、屋上は国産の太陽光パネルと言う工場の形態が作り上げられた。
中には2Fに工場やオフィスが作られ、小さな町として機能するようになっていた。
いつしかエネルギーは無料で、意欲や夢や努力すればだれでも無償で高等教育が受けられる環境が出来上がっていた。
またこの工場の知財は国に寄贈されており、だれでも自由に利用することができた。
かくして豊富な資源を持つ国としてよみがえることになる。

つづく