はじめに
J国は衰退の一途を辿っていった。一部の大企業の寡占が進み、ルールを変え、政治家も経営者も世襲だらけになっていた。個人も企業も補助金漬けで、社会全体の国際競争力も失いつつあった。若者は夢や希望を失い、頑張る事を止め、バーチャルな世界に逃げ込みひたすら転生を夢見ていた。

その時代を象徴していたのがT氏の帝国である。
T氏はJ国の殆どの富を集中し、政治や経済、学術会、メディアに至るまでコネクションを張り巡らせ、殆どの競争企業を次々に従えて、国の政策を動かすほどだった。
あるときにT氏の企業が大きな不具合のある製品を出荷し事故が多発して社会問題になったが、大きな不具合をさりげなくかつ少しづつ修正してしまった。それにはメディアもスポンサーマネーを気にして大きく取り上げなかった。
そればかりか安全のためとして、当局を動かし規制を強化して不具合が他社でも起きるように画策したりもした。

また、企業ぐるみの不正が明るみに出た時も、規制の方法に問題があるとして、司法当局を動かして、逆に規制を強化し参入障壁を上げて競争を阻害してしまっていた。
そればかりか自然豊かな原野を切り開き、こともあろうか火山の麓にT氏の都市まで作り始めたのだった。もう誰も抵抗する気力もなくなり、T氏の帝国と呼ばれていた。

つづく
