少し前に買っていたPLAカーボンフィラメントの評価を行います。自作の3Dプリンタ Rostock Nanoで確認しています。
つづき
カーボン繊維風にこだわる理由
貴重なカーボンフィラメントを効率良く使うためでもありますが、ロボットの外装の軽量化や、高価なカーボンクロスを購入しなくても良くなることを期待しています。
カーボンクロスは樹脂を含侵させていないカーボンの布で、これを型に巻き付けて、エポキシ樹脂などを使って固めることによって、軽量なロボットのカーボン外装が作れます。
カーボンクロスは、10㎝✖10㎝でも500円程してとても高価な素材です。 カーボン繊維風モデルを使えば価格は、10cm✖10cmだと
・フィラメント価格 4000円
・フィラメント重量 1Kg =1000g
・フィラメント使用量 10g
とすると
4000÷1000×10=40円
程度になります。
カーボンクロスの厚みは、0.25mmですが、カーボン繊維風のモデルは、0.20mmの四層として、0.8mmと厚くなりますが、その分強度が確保されます。結果として重さは約4倍になりますが、価格は1/10で済みます。
なにもしないと
カーボンフィラメントを使っても、何もしないで他のフィラメントと同じように印刷すると、強度が強く硬くはなりますが同じ重さ(若干重い)になってしまいます。
せっかくの高価なカーボンフィラメントなので、フィラメントの使用量を抑えて、かつ軽量化も期待したい所です。
板厚を押さえる
カーボンフィラメントで作ると強度が増すので、普通のフィラメントで2mm必要な板厚が、半分の1mmでも十分な強度が得られます。そうすると重さは約半分になります。ただ柔らかくなるので、適当に補強の骨組みを入れる事になります。
また、3Dプリンタの場合は、板厚を薄くしても最後にベットから造形物を剥がす必要があるので、あまり印刷物を薄くすると、剥がす時に板が曲がったり、変形してしまうことがあります。PLAカーボンフィラメントはベッドへの食いつきがとても良いので、特に剥がすのが難しいフィラメントです。
カーボンは硬いけど柔らかい?
カーボンというと”硬い”と言うイメージがありますが、同じ厚さなら硬いのですが、薄くすればカーボンも柔らかくなり、力が加われば”しなり”ます。他の素材だと薄くすると力が加わると折れたり、曲がって変形して、元に戻らなくなります。カーボンであれば、柔らかくしなって、力が加わらなくなると元に戻ります。
カーボンは使い方によって、硬くて柔らかい素材なのです。
さらに軽量化
さらに厚みを半分にすれば軽くできそうですが、融解積層方式の3Dプリンタではどうしても押し出しムラで、造形物の表面にデコボコや隙間が出来てしまいます。積層厚を薄くしてゆっくり造形すれば綺麗になりますが、時間が何倍もかかります。また、厚みを1mmより薄くすると、相当柔らかくなってしまうので、梁を入れ補強を行う等、3Dモデルに変形を加える必要が出てきます。
では1mmの中をさらに中抜きすれば良いのですが、カーボンフィラメントは伸びがないので、スライサーの機能では丁度良いサポートを作るのは難しいのです。
3Dプリンタで布を織る
前述のモデルは厚さが0.1mmで幅が2.5mmのリボンを交互に並べて、ノズルから押し出されたフィラメントが、カーボン繊維のように機能させて、カーボンの布を作るモデルになっています。
印刷速度の推奨は、10mm/sec以下です。
もちろん一本のカーボン繊維では無いので、ほんとうのカーボンクロスより強度は落ちますが、見た目も綺麗なカーボン柄になります。
後加工ができる
布のように織ってあるので、型が熱に強ければ巻き付けて、ドライヤーで一旦あぶって柔らかくし、冷まして固める事で、後から形状を調整する事ができます。また折ったり、ハサミで切る事もできます。
ただ当然ですが表面がでこぼこしているので、後加工すれば、重さは1.2から1.3倍程度になりますが、表面が綺麗なカーボン柄の造形物が作れます。
手前が後加工後、奥が加工前です。
加工前
加工後
3Dプリンタなので
3D形状を時間をかけてモデリングし、時間をかけて印刷すれば一発で作れるのですが、モデリングの時間や失敗時の作り直しを考えると、カーボン繊維風の板を加工して外装を仕上げる方が早い場合が多いと思います。
また、モデル上で変形させてカーボン柄にしても、積層痕は残ってしまうので、綺麗なカーボン柄にはならないと思います。
重さは
ソリッドモデル(単板)の半分とはいきませんが、1.6から1.7倍軽くすることができました。
ソリッドモデル 板厚 0.8mm 3.5g
カーボン繊維風 0.20mm積層、板厚0.8mm 1.9g
カーボン繊維風 後加工後 2.7g
カーボン繊維風の板材を印刷して上手く使えば、柔らくはなりますが、軽量で強度のあるロボットの外装材が作れます。
カーボン繊維風の利用価値
ロボットの外装に使うにはそんなに曲げる必要もないので、Z方向を二倍にして、積層を0.2mmにして、速度を100mm/secにして造形するのが良さそうです。こうすることで、隙間が空きにくくなり印刷時間も大幅に短縮されます。
印刷時間は半分以下で、べったりベットにべったり食いつかないので薄くても剥がしやいです。
もちろん
この手法は他のフィラメントでも有効だと思います。例えば糸引きの多いが、綺麗でやわらかいPETGフィラメントを使えば、綺麗な布が織れるかも知れません。硬くて脆いPLAフィラメントに使えば柔らかくしなやかで強度のある造形になるかもしれません。
同じ素材でも、造形によって特性が変わる所が、3Dプリンタの面白い所です。
(今度やってみよう)
つづく
購入品情報
評価中のPLAカーボンフィラメントです。